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73回会JCMA総会への招き

総会会長 青木理恵子
在日外国人と医療
 -だれひとり取り残さないために-

 2020年初頭から私たちは、世界のどこの地域に暮らしていても新型コロナ感染症の影響を大きく受け生活のあらゆる面が大きく変わりました。JCMAの総会も2020年は延期、2021年はオンラインの開催となり、2022年の今年はオンラインと現地の両方で行うことを予定しています。

   今年の総会会場は、滋賀県の琵琶湖湖畔の静かな所です。これまでできなかった旅行を今年の秋に予定し久しぶりに皆さんと出会って、膝を突き合わせて話し合いをし、心を合わせて祈る時をもつことができますように願います。また、昨年から導入したオンラインによる配信により全日時間をとることが難しい方や長距離の移動に体力的な無理がある方もご自宅から可能な時間を選んで参加できます。現地とオンラインという二つの方法でより多くの方が参加できることを願っています。  今年のテーマは、「在日外国人と医療-だれひとり取り残さないために- 」です。

 今年の総会では、在日外国人の実情を知ることを通して人権について、自分の意識について、キリスト者の立ち位置について、考え意見交換をする機会を持ちます。 プログラムは、李節子さんによる主題講演、在日外国人と関わる取り組みをしている4人からの話題提供、そして参加者による小グループの井戸端会議を行います。 総会の焦点は、「寄留民」です。アジアの東端にある小さな半島である日本は、歴史的に色々なところから人が移住し、また旅立って行きました。いつの時代にも色々な人が助け合い、また緊張関係を持ちつつも工夫をしながら折り合いをつけて多様な社会を築いてきました。多様な背景を持つ人たちが共存することで社会を豊かにしていることは世界の歴史から明らかです。しかし、寄留者は旧約聖書の時代から良く思われていませんでした。定住者の祖先もかつてはどこかの地からやってきた寄留者であったことを忘れて新参者を警戒し、排除する心は個人の中にあります。それを時の政治が利用してきたのが私たちの歴史ではないでしょうか。
 在日外国人とは誰を指すかと言うと年代によって理解が異なると思います。
50才より上の方にとっては在日外国人とは戦前戦後に朝鮮半島から移住された人々とそれより前から港町に住んでいた中国人、ロシア人などの方々を思い浮かべると思います。若い人たちにとっては、フィリピン人や日系ブラジル人の存在そしてスポーツ界や芸能界で活躍する海外にルーツを持つ人たちの存在が印象的であると思います。
 戦後の日本は、労働力不足を補うために海外からの労働者を多数受け入れることを政策としてきました。発展途上国や後進国と言われる国々では働き口がない人々が家族を支えるために海外への出稼ぎを政府が推進し多くの人たちが1980年代ごろから日本にも働きに来るようになりました。一方で、この50年間には戦争や紛争、環境破壊によって被害者が増え、自国の経済危機により家族が生活できない地域が増えました。また企業が多国籍化したのもこの時期の特徴です。その結果国や地域を超えて生産と販売がなされるようになりました。その結果多くの人たちが国境を越えて移住しています。2020年12月時点で日本には、194の国と地域の中長期在者iが2,887,116人生活しています。ii
多様な年齢の外国人が日本社会のあらゆる場面で働いて社会に貢献し、生活を営んでいます。多くの医療従事者も働いています。在日外国人の多様性については、2021年7月から2022年5/6月号までの「医学と福音」に掲載された記事をお読みください。 国境を越えて移動する人たちは、言葉の壁がある上に常識や医療や福祉の制度が異なるため、利用できる制度も理解できず医療につながりにくい現実があります。海外からの移住者がすんなりと利用できる仕組みになっていません。
私たちキリスト者は、みな国籍を天国に置き、寄留民として異国の地に暮らす者です。互いに助け合い愛することが求められています。
聖書には、「あなたたちのもとに寄留する者をあなたたちのうちの土地に生れた者同様に扱い、自分自身のように愛しなさい。」(レビ記19章34節前半) と書かれています。この教えをどのように生きたら良いでしょうか。
今年の総会では、在日外国人の現実と出会い、知り、キリスト者がどこに立ったら良いのかを考える中で聖霊が私たちの心に次の行動への種を育ませてくださると確信しています。心の中に撒かれる種は私たちに信念と情熱を与えるものとなるでしょう。その種は、からしだねのように小さい存在かもしれませんが、からしだねが生み出す信念と情熱は常識を塗り替え新しい文化を創り出すことにつながります。この秋にお会いできるのを楽しみにしています。
会場は日本一大きな琵琶湖畔の豊かな自然の中にあります。琵琶湖畔の散歩も楽しむことができます



琵琶湖コンファレンスセンター



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